マリア
第10章 夜想曲
「に、二宮くんはお代わりしないの?」
和「俺、まだ、半分以上あるから。」
「そ、そう。」
二宮くんから目を逸らしながら席につく。
和「あっ!?…この間はごめんね?先帰っちゃって?大丈夫だった?」
「あ?え?だ、大丈夫、って?」
和「押し倒されたり、とか?」
「お、お、押し倒す、って!?」
思わず大声を張り上げる僕を見た二宮くん、
シーッ、シーッと言いながら人差し指を立て唇に押し当てた。
「あ……」
顔を真っ赤にしながらストローを咥える僕を見て、二宮くんはテーブルに突っ伏し、声を殺して笑った。
「そ、そんな笑わなくたって…。」
和「だ、だって…」
可愛いんだもん、と、しばらくそのままの姿勢で、肩を震わせ笑いを堪えていた。
和「うちの兄貴、彼女いないじゃん?溜まってたら大野さん、格好の餌食だなぁ、って思って?」
あー、可笑しい、と、
目尻の涙を指先で拭った。
「だから、って、そんなことするように見えないよ。」
和「へぇ…」
頬杖をつくと、二宮くんは僕を上目で見、静かに笑った。
和「そんなこと分かんないでしょ?ああ見えてフツーの男なんだから?」