マリア
第2章 前奏曲
あと少しで昼休みも終わり、というところで智から着信があった。
智『翔くん、今日、うちに来る、って、言ってたよね?』
「あ、う、うん。」
智『ごめん。さっき携帯に連絡があって、礼音、入院することになったらしいんだ?』
「え…!」
智『あっ、でも、大したことなくて、大事とって入院するだけみたいだし。』
脅かすなよ…。
智『だから今日はゴメンね?』
「………。」
…この際、ソイツに代わりしてもらったら?
…いいじゃん、男でもさ?
雅紀の言葉が頭を過る。
…何でこんな時に思い出すんだよ!?
「くそっ!!」
智『え?』
「あ…いや…何でも…。」
よりによって、智の前で出てしまった心の声。
智『翔くん、ホントにゴメン!この埋め合わせは必ずするから?ね?』
智は、礼音のドタキャンに俺がイラついたとでも思ったのか、
泣きそうな声で必死に謝ってきた。
「気にしなくていいから…。」
電話の向こうから聞こえてくる始業ベル。
ホントにゴメンね、と、
電話を切る間際まで、智は俺に謝り続けた。
スマホをポケットに仕舞い、目の前の壁を拳で思い切り打ち付ける。
…謝るのは俺の方だよ、智。
唆されたとは言え、
お前に、不埒な考えを抱いてしまった俺の方…。
…いいじゃん、男でもさ?
……よくねぇよ。
…代わりしてもらったら?
……代わりになんかなるかよ!?
智、お前は俺の…大切な友達…
だから……。