マリア
第2章 前奏曲
智side
礼「ね?智、聞いてる?」
「え?あ、何?」
礼「どうしたの、ぼんやりして?」
礼音はくっきり二重の大きな瞳で僕の顔を覗きこんできた。
礼「翔くん、やっぱり、怒ってるよね?」
「うん…。」
礼音が入院したその日。
途中、僕は礼音の様子を見に病院に立ちよった。
あの時の翔くん、
怒ってた、と、言うよりは、少し変だった。
どこか、心、ここにあらず、っていうか…
礼「さ・と・し!」
「ん?」
僕が驚いて顔を上げた拍子に、
礼音は僕の唇にチュ、と音を立ててキスをしてきた。
「あっ…あっ…あや…」
礼「へへっ。スキあり〜♪」
慌てて回りに人がいないか確認し、声を潜めて礼音を叱る。
「スキあり、じゃないの!!誰かに見られてたらどうすんの?」
礼「え〜!?ちっちゃい時はいっつもしてたのにぃ〜」
礼音は、小さな唇を尖らせた。
「あのね、ちっちゃい時はちっちゃい時でそれはそれで可愛い、って回りは見てくれるけど、これだけおっきくなってしてたらおかしいでしょ?」
礼「そうかなあ?」
「そうなの!!」
礼「しーっ!!」
「あ…。」
ついつい大声になってしまった僕を、今度は逆に礼音がたしなめた。