マリア
第12章 追走曲
眠れていないのか、
目の下にはクマが出来ていて、頬は少し痩けている気がした。
もしかしたら、
俺の言ったことが元で、礼音にキツいことでも言われたんじゃないか、って、
本当は身の置き所がないんじゃないか、って、
そんな智の姿を見ただけで俺は、胸が押し潰れされそうになった。
智「翔くんが言ってたこと、礼音には話してないんだ。」
「え?」
突然の智の言葉に、
智の姿から目が離せなくなってしまう。
智「どう切り出そうか考えてたら、礼音の方からそうなんじゃないの?って。」
智の手元から鉛筆の音が消えた。
智「礼音、笑ってたよ。しょうがないよね?って。」
身の置き所がないのは、智じゃなくて…
智「だから、礼音のことは大丈夫。僕ら、家族で支えていくから。」
智じゃなくて、俺の方だったんだ。
智はスケッチブックから俺の似顔絵を引き剥がすと、俺に向けて差し出した。
智「僕らの方こそごめんね?翔くんのこと縛りつけてて。」
なかなか受け取らない俺に業を煮やした智は、
俺の手に絵を握らせた。
智「もう、礼音のことで悩んだりしなくていいからね?」