マリア
第12章 追走曲
智、それ、って…
智「翔くん、今までありがと。」
ずっと、謝りたかったのだ、と智は繰り返す。
そうして俺の手に重ねられる智の綺麗な手。
冷たい冷たい智の手。
智「翔くんのこと解放してあげるね?」
智は俺の手をきゅ、と握ってきた。
智「だからもう、僕らも会うの止めよ?」
会うのを…止める?
何、言ってんだよ?
俺と礼音が終わったからといって、なんで智と俺が終わんだよ?
でも、寂しそうに笑いながらほどかれる、手。
小さい時から何度も何度も握ってきた、手。
今、俺がここで首を縦に振ったなら、
もう、二度と握ることは叶わない。
イヤだ…。
そんなの、絶対にイヤだ!!
離れてゆく智の指先を捕まえ、引き寄せた。
智「…翔くん?」
驚き、俺を見つめる智の目。
それもそのはず。
智の体は、
俺の腕の中にあったから。
智「あ…あの…。」
「そんなこと、言うなよ。」
戸惑う智に構うこと無く、
俺は力一杯、智を抱きしめた。