マリア
第12章 追走曲
智「翔…くん?」
涙がボロボロと零れてきて、顔があげられない。
「頼む…から…」
でも、智は、
俺の体をそっと押し退けて腕の中から出ていってしまった。
智「僕、決めたんだ。礼音の側にいる、って。」
ポケットからハンカチをとり出し、涙でぐちゃぐちゃな俺の顔を拭ってくれる。
智「礼音の最後の瞬間まで側にいてあげる、って。」
ほら、鼻、かんで?と、ポケットティッシュまでくれた。
智「もー、ちっちゃい子供みたい。」
智に背を向け鼻をかむ俺に、智は困ったように笑った。
「もう会わない、なんて言うからだろ!?」
鼻をぐずぐずいわせたまま智に意見する。
智「だって…会いづらいでしょ?」
礼音とサヨナラしたんだし、と、諭される。
智「礼音は僕と翔くんは友だちなんだから別にいいんじゃないか、って言ってくれたけど…でも…」
智が口ごもる。
「だったら…礼音がそう言ったんなら会わない、なんて言う必要ないじゃないか!?」
俯く智の肩を揺すった。
智「もう、決めたことだから…」