マリア
第12章 追走曲
『じゃあ、さ、いっそのこと、無理矢理ヤっちゃう、とか?』
二宮の言葉が頭を掠める。
どうせ、もう、会わない、って言うんだったら…
いっそのこと、本当に智のこと…
何度も何度も、不埒な考えが浮かんでは消える。
もしかしたら、会わない、って言ってるだけで、こちらから会いたい、って連絡したら会ってくれるかも、って気持ちもない訳じゃない。
でも、もし、本当にもう会うつもりがなくて、
智があの、松本、って医者とどうにかなるつもりなら、って考えたら…やっぱり…
智「…翔くん?」
俯いていた智の顔を持ち上げ見つめた。
「智くん、俺…」
智の目が俺の一挙手一投足に注目している。
俺が次に何を言うのか、耳を傾け待っている。
「俺は…」
小さな子供のように無垢で曇りのない透き通った目。
その、頼り無げな体を、
ただ、抱きしめた。
今まで言えなくて飲み込んでいた言葉。
面に出せなくてし舞い込んでいた気持ち。
今、ここで、
言葉に、面に出すことを許して…
「好きなんだ…だから…」
ずっと、俺の側にいて…