マリア
第2章 前奏曲
「どうしたの?」
礼「智は…好きな女の子とかいるの?」
「え?な、何?いきなり?」
礼音は相変わらず俯いたまま僕に話しかけてきた。
礼「もし、その子のことが好きで好きでたまらなかったら、キスしたいな、とか思うよね?」
「うんまあ…そうなるのかなあ?でも、何で?」
…やっぱり、翔くんと何かあったのかな?
礼「その…先、とか…も?」
「え?」
礼「ゴ、ゴメン!やっぱ、いい!」
礼音は慌ててベッドの中に潜り込んでしまった。
「礼音…」
礼「き、聞かなかったことにして?」
「……分かった。」
母「あら、智、来てくれたの?」
椅子から立ち上がりかけた時、ちょうど大きな紙袋を抱えた母さんが病室に入ってきた。
母「あら礼音、どうしたの?」
「ちょっと、落ち込んじゃってて…。」
母「まあ…。」
母さんは、大きな紙袋をベッドサイドに置くと、
大きなリンゴを一つ取り出した。
母「ほーら、礼音。あなたの大好きなリンゴ、買ってきたわよ?」
と、シーツの中に潜り込んだ礼音の顔の位置でリンゴをちらつかせる。
すると、リンゴの香りに誘われるように、
シーツの中から礼音が顔を覗かせた。