マリア
第13章 夢想曲
先生にキスされたのだ、と、
至近距離で先生の顔が目認出来た時点で気づいた。
「あっ…あのっ…今のは…。」
真っ赤になって、しどろもどろになる僕を見て、
先生は口元を緩めた。
潤「…イヤ…だった?」
「そっ…そんなことは…」
俯く僕の頬を、先生の手のひらが優しく包みこむ。
潤「そう…」
まただ…。
妖しく細められる、目。
こんな…こんな先生、見たことない…
「先生、あの……こんなところで…その…」
潤「こんなところで、何?」
顔を上向けられ、先生と目が合う。
いつもと違う先生に、ただでさえ早い鼓動がさらに早くなる。
「だから…キ…」
再び唇に重なる先生の体温。
「ふっ……んくっ…」
重なる唇の感触が心地よくって、無意識に甘い声が洩れる。
その声の隙間から先生の舌が僕の口の中に滑り込んできて、
ねっとりと絡み付いてきた。
「んっ…ふっ…う…ん」
甘く優しい先生のそれに答えるようにそっと絡めると、
僕と先生の間に感じたことのない温度が生まれた。
不意に、するり、とほどかれようとする先生の温もりを追いかけすがるように絡めとる。
けれど、息が止まりそうな程に舌を吸いあげたあと、先生は口内から逃げるように出ていってしまった。