マリア
第13章 夢想曲
家に着くと倒れ込むように自室のベッドに潜り込んだ。
しばらくして、人の気配に気づいた僕が目を開けると、礼音が僕の顔を心配そうに覗き込んでいた。
礼「気がついた?」
体を起こそうとする僕を制するように、礼音は僕の体をベッドに沈めた。
礼「まだ、寝てないと?」
と、ずれたシーツをかけ直してくれる。
礼「顔、赤いね?」
礼音は冷たい水に浸したタオルで汗を拭いながら笑った。
礼「お粥、持ってきたんだけど食べる?」
「う…ん。」
少し眠ったお陰で熱っぽかった体は幾分軽くなり、
程よい空腹も感じられた。
礼音はゆらゆらと湯気が立ち上る器から一匙お粥を掬い取ると、形のよい唇をすぼめてフウフウと息を吹きかけた。
礼「智、猫舌だから、ちょっと時間かかるけど待っててね?」
と、また、唇をすぼめ、息を吹きかけた。
「………。」
礼音の唇。
薄い、ピンク色した礼音の唇。
幾度も翔くんの唇が重ねられた唇。
礼「何?私の顔に何かついてる?」
「あ、ううん。」
礼「はい、あーん、して?」
素直に口を開け、お粥を口に運ぶ。
礼「おいしい?」
頷く僕を見て、礼音は満足そうに笑った。