マリア
第13章 夢想曲
「ねぇ、先生?もし…もしもなんだけど、蜘蛛の巣に絡まっていたのが蝶とかじゃなくて…」
潤「蝶とかじゃなくて、何?」
僕の頬を挟んでいた、僕より一回り大きな手に自分の手を重ねた。
「蟷螂とか、自分より大きくて凶暴な獲物だったりしたらどうするの?」
僕の切り返しに、先生の大きくて黒目がちの目が一瞬だけ見開かれる。
潤「そうだね?どうしようか?」
やんわりと、僕の手を払いおとし、僕の頬を挟み直した。
潤「相手が身動きでない分、こちらにまだ分があるから衰弱していくのを待つ…かな?」
「待つんですか?」
潤「…か、やり返されないように一想いに、急所を仕留めるか…」
先生の顔が近付いてきて、僕の上唇を上下の唇で挟み込む。
潤「口開けて…」
言われた通りにすると、
先生の舌がぬるり、と口内に差し込まれて僕の舌を絡め取る。
「ふっ……うっ……んっ…」
わざと大きな音を立てながら、
僕たちは互いの舌を味わうように絡めあった。
不意に、先生の舌がするり、と抜けていって、
僕の顔を覗き込んだ。
潤「後悔……しない?」
先生の顔をしばらく見つめ返したあと、今度は僕の方から先生の唇を舌で抉じ開けた。