マリア
第15章 悲愁曲
智「ごめんね?前もってやってるかどうか調べておけばよかった。」
お目当てのタルトの専門店が臨時休業、と、いうことで、
たまたま通りがかった公園でクレープの移動販売車を見つけて、
俺が「あれでいいよ。」と、言ったことから、
大野くんと二人、ベンチに腰かけ、さみぃね?とか言いながらクレープにかぶりついた。
智「うん。美味しい。」
口の回りをクリームまみれにしながら大野くんは笑った。
「俺のもめちゃウマ♪」
大野くんはイチゴ、俺はチョコバナナ。
智「ね、一口ちょうだい?」
「いいよ。じゃ、取っ替えっこ、する?」
と、互いのものを交換する。
智「ん〜これも美味しい♪」
「こっちも♪」
俺らの女子力に気圧され、目の前のベンチに座ってるカップルがドン引きしていた。
智「あ!!相葉くん、ついてるよ?」
「へ?」
智「こ・こ!」
と、何の躊躇いもなく伸ばされる大野くんの指先。
口元のチョコレートを掬い取り、
赤い唇の中へと吸い込まれてゆく。
智「うん。やっぱ、美味しい。」
「・・・・。」
艶然と微笑むその姿に俺は…
我を忘れて見惚れてしまった。