マリア
第15章 悲愁曲
翔『は……何だよ、それ?智は関係ないだろ?』
「だって、翔ちゃん、彼女いるのにカズに手、出してるでしょ?あ、それともカズは病弱な彼女のかわり、ってことかな?」
翔『代わりとか、って、そういう言い方やめろよ!!』
「…他人のものに手、出しといて言うね?」
翔『……っ!!』
電話で話していても、翔ちゃんの苛立ちが手に取るように伝わってくる。
「まあ、そういうことだから、そっちはそっちでヨロシクやったら?」
翔『そういうこと、って…雅紀、お前、マジで智に…』
「うん。だって、今、一緒にいるからね?」
こちらでなされている会話の内容なんて、
どこ吹く風なんだろう。
大野くんは、しゃがみこんで、通りすがりの散歩をしていた犬の頭を撫でたりしていて無邪気に振る舞っていた。
「…楽しみだなあ。」
翔『ま、雅紀…!』
「どんなだろうね?エッチしてる時の顔、とか、声とか…」
翔『やめろ!!智には手を出すな!!』
「えー?自分は俺のカノジョ寝盗ったのにぃ?」
…そうだよ。優等生だからって、少しぐらい勉強ができるからって、何やっても許されると思うなよ!!
「じゃ、もう切るね?」
翔『あっ!?お、おい、待て雅紀!!ま…』
翔ちゃんとの会話を強制終了させたあと、
本当は、これからも蚊帳の外にいるはずだった彼に笑いかけた。
「ね、このあとなんか予定ある?」