マリア
第16章 迷走曲
潤「終わったよ。」
アイツにそう言われるまで、枕に顔を埋めたままだった大野さんだったけど、
突然ベッドから飛び起きてアイツにしがみつくように抱きついた。
智「先生…!」
潤「よしよし。偉かったね?」
そして、アイツも大野さんを抱きしめ返し、頭を撫でた。
智「先生、ご褒美ちょうだい?」
潤「ご褒美?」
智「僕、先生のために我慢したんだから…」
潤「分かった。何がほしいの?言ってごらん?」
智「キス……して?」
潤「え…?」
こちらをちら、と見るアイツと目が合う。
智「先生のキスがいい。」
大野さんは、甘えるみたいにアイツの胸の中に顔を埋めた。
智「ね……いいでしょ?」
俺は、少し戸惑うような顔をしたアイツから目を逸らした。
潤「し…しかし…。」
「あっ!?お、俺、出てるから。」
と、慌てて部屋から出ていった。
「ふー…。」
ドアに凭れ、大きく深呼吸していると、
櫻井さんが心配そうに近づいてきた。
翔「二宮、智くんの様子は?」
あっ…!この人の存在忘れてた!(←笑)
「思ってたほど傷の状態が軽くて、念のため薬飲ませたら大丈夫だろう、って?」
翔「そ…か。よかった。」
が、櫻井さんは、
まだ、何か言いたげに、じっとこちらを見つめていた。