
マリア
第16章 迷走曲
潤「じゃあ、ぼくもそろそろ…」
上着を手に立ち上がり大野さんに歩みよって二言三言言葉を交わして、
アイツは大野さんの頭を笑顔で撫でて部屋から出ていった。
智「二宮くんどうしたの?らしくないよ?」
優しく言葉をかけてくれた大野さんの手を振り払った。
「…なんで何も言わないの?」
智「え?」
「傷心の恋人の側にいるより仕事を選ぶなんて?」
智「そんなこと…しょうがないじゃない?」
そんなもんなの?
さっき、俺の目の前でキスをねだってた人とは別人じゃない?
「アナタがいいなら、これ以上言いませんけど?」
何か食います?と、
コンビニへ食料調達に行くついでに、
アイツの部屋に立ち寄って、一言言ってやろうと考えていた。
潤「はい?」
呼び鈴を押すと、その部屋の主はすぐに顔を出した。
「何やってたの?病院からの呼び出しがあるかも知んない、って言っておきながら。」
潤「ああ、調べものをしてた。」
「ふーん。ちょっと入っていい?」
潤「どうぞ。」
眉間を指で押さえながら、リビングへと歩いて行くアイツの後に続いた。
