
マリア
第16章 迷走曲
二宮くんから漂う香りに惹かれるように、回りをくんくんと鼻を鳴らしながら嗅ぎ回った。
和「そう?」
二宮くんも、自分の服に鼻を押し付け臭いを嗅いだ。
和「あんま分かんない。俺、今風邪気味だから。」
と、残りのデザートを冷蔵庫にしまった。
和「ご家族、なんて言ってました?」
「ん?」
和「泊まる、って連絡したんでしょ?」
「特に…何も…」
ロールケーキを口に運びながら言葉を濁した。
和「…ですよねぇ。」
俺の食ってみます?と、二宮くんは小豆プリンを一口くれた。
「あ、おいし♪」
和「俺にも一口、それ、ちょうだい?」
「いいよぉ。はい?」
と、フォークで掬って二宮くんの口の中に入れた。
「おいしい?」
二宮くんは口をもごもごさせたまま、親指と人差し指で丸を作った。
そして、こくん、と飲み込んだあと、
二宮くんは僕に顔を近づけてきて、
触れたか触れないかのようなキスをした。
「に…二宮…くん!?」
和「食べさせてくれたお礼ですよ?」
にこ、と笑うと、二宮くんはレモンイエローのマグカップに入ったコーヒーを啜った。
