マリア
第16章 迷走曲
翔side
久しぶりの智との道行に、傍目から見ても気味が悪いぐらいにニヤニヤしていた。
俺のせいで、智が酷い目にあったに関わらず、にだ。
昼休み、俺は雅紀を問い詰めてやろうと雅紀の教室を訪れるも、
雅紀は学校に来ていなかった。
当然だ。あんなことを仕出かしておいて、のうのうと学校に来ていたら神経を疑う。
季節は、そろそろ雪の便りが届いても良さそうな時期だったけど、
いつも雅紀と昼飯を食う場所で、
俺は一人で焼きそばパンにかぶり付いていた。
雅紀のヤツを問い詰めてやろうと息巻いていただけに、
肝心の当事者がいなくて拍子抜けだったけど、
この時の俺は、
まさか、その当事者が、
もう一人の当事者と直接連絡を取り合い、会っていたなんて、
想像すらしていなかった。
呑気に、ただ、
初冬の、少し暖かい昼下がりを学校の屋上で満喫していた。
放課後、部活のある俺は、帰りを帰宅部である二宮に智を任せ、自宅まで送らせる手はずになっていた。
だが…
「えっ?」
和『だから、人と会うから来なくていい、って言われたんです。』
「会う、って誰と?」
和『そこまで知りませんよ。兄貴じゃないの?』
このタイミングで智と会う約束ができるヤツ…
やっぱり、アイツか…
俺も二宮も、てっきりあの医者だと思い込んでいた。
だから、俺はそれ以上二宮を追及することをやめた。