マリア
第17章 序曲 ①
せっかくだから、と、いう体で二宮と一緒にマンションに向かった。
部屋の前まで行くと、つまらなさそうにドアに寄りかかる智がいて、俺たちの気配に気づくと嬉しそうに駆け寄ってきた。
智「二宮くん!!」
和「その食材、もしかして…」
智「うん。鍋にしようと思って?」
と、線が細すぎる智には不釣り合いな大量の食材を買い込んでいた。
智「今日は早く帰れる、って、言ってたんだけどな?」
和「どうせまた急患でも診てんでしょ?あの人じゃなくても医者はウジャウジャいるんだから任せなさい、って言ってんのに。」
智「そんなこと…逆に先生らしくてそういうとこ好きだな?」
好き……か。
そう言ってもらえるアイツが羨ましい。
智「ね?翔くんも食べるでしょ?鍋。」
「え?あっ…何?」
和「聞く必要ありませんよ?あの人から食欲とったら性欲が服着て歩いてるようなものだから。」
一言余計だ、と、二宮にヘッドロックを食らわせ、頭に拳をグリグリ押し付けた。
和「痛い痛い!!暴力反対!!大野さん、助けて!」
「るっせぇよ!?歩く性欲、ってどういう意味だよ?」
和「まんまの意味でしょうが?」
二宮とじゃれあうことで俺は、
気を紛らわそうとしていた。