マリア
第17章 序曲 ①
和也side
「ったく、手を抜く、ってこと知らないのかねぇ、あのイケメンは?」
豪快に野菜をばっさばっさと切ってゆく俺の隣で、大野さんは器用に魚を捌いていった。
智「だからいいの!仕事してる姿も格好いいから。」
と、大野さんはあっという間に魚を三枚におろしてしまった。
「しかし、お上手ですね?いつでもお嫁に行けるんじゃない?」
智「そっ…そんな!?お嫁に、なんて///」
「なに照れてんです?冗談に決まってるでしょ?」
智「や…やだなあ?そんなこと、本気にする訳じゃない?」
「に、しては顔が赤いですけどね?」
と、大野さんが手際よく捌いた切り身を鍋に入れた。
そこで、やたらと静かな、連れの存在の視線に気づいて、
大野さんを小突いた。
「こっち見てるよ?」
智「お腹すいてるから早く食べたいんじゃない?」
「大野さんを?」
智「な、何言ってるの?僕は煮ても焼いても美味しくないから食べられないよ?」
「でも、兄貴は何にも手を加えないであなたを美味しく頂いてるでしょ?」
智「にっ…二宮くん///!!」
「あなたもそうじゃない?あっ!!でも、柚子の絞り汁ぐらいはかけた方がいいかも?」
智「何で?」
「そのままだと、濃すぎない?」
智「………」
しばらくキョトンとしていたけど、
思わず顔を見合わせ爆笑してしまった。