マリア
第17章 序曲 ①
和「確かに、あれはキツいよね?」
と、他人事のように腕組みをして智を見ていた。
「別に…俺は何も…。」
そんな俺に二宮は、耳元に顔を寄せると、こう、囁いた。
和「もしかしたら…仕返しなんじゃない?」
「まさか…」
和「アンタは俺とヤってたことを大野さんに言っちゃった。俺も口を滑らしちゃった。結果、自分がひどい目に合わされた。」
「まさか…まさか、智がそんなこと…」
和「あの人だって人間だもん。お前らがやらかしていなければ、ぐらいは思うんじゃない?」
「やっぱ、そうなのかな…?」
ソファーの上で膝を抱え顔を埋めた。
すると、その俺の頭をポンポンと叩く気配に顔をあげると、
智の笑顔があった。
智「翔くん、もうちょっとで出来るから我慢して?」
が、もうそこには智の姿はなく、鼻唄を歌いながらキッチンに戻っていく後ろ姿しかなかった。
和「ご機嫌ですねえ。」
二宮は意味深に目配せをしながら智の後に続いた。
程無くして始まった鍋を囲んだ男子会。
若い俺らの胃袋がほどよく満たされた頃だった。
アイツがこの部屋にやって来たのは。