マリア
第17章 序曲 ①
有り得ないぐらいの素早さで、俺の手から智の携帯を叩き落とした。
和「あ……」
携帯は大きく鈍い音を立て床にこぼれ落ちると同時に、着信音も止まってしまった。
「壊れちゃったんじゃね?」
和「どうしよう…?」
二人であーでもない、こーでもないと智の携帯を眺めていると、
智が戻ってきた。
智「何やってるの?」
智はすりおろしてきたリンゴの入った器を置き、携帯を奪い取った。
「何、って…二宮がカレシからじゃないか、って、とろうとしたら見慣れない番号だったんだよな?」
和「えっ!?あ…うん。」
智「そう…」
智は俺らに背を向けたまま、ちょこちょこと携帯を弄り、しばらくパネルを見つめていたが、
大きく息を吐き、携帯をポケットにしまった。
和「あ…あの…」
智「大丈夫。壊れてなかった。」
振り向き、智は笑った。
胸を撫で下ろしたのもつかの間、二宮の顔は強ばったままだった。
もしかして二宮のヤツ、
あの時、何か見てるんじゃ…。
再び二宮に目をやると、ただでさえ色白なところを持ってきて、その顔色は…
恐ろしいぐらい蒼白だった。