マリア
第17章 序曲 ①
智「はい、翔くんお待たせ。」
と、智は一緒に買ってきたヨーグルトの封を開け、すりおろしてきたリンゴと混ぜた。
智「はい、口開けて?」
「えっ?」
ちら、と二宮を見た。
壁に寄りかかりゲーム機を持っているけど、その指先は動いていなかった。
指先どころか、表情さえずっと同じで、まるで、良くできた蝋人形のようだった。
どうした、って言うんだろ?
ま、それは後で追及することとして、今は智が食わしてくれる絶品ヨーグルトを堪能しようと決め込んだ。
智「おいしい?」
「う、うん。」
智「そう言えば気になってたんだけど、顔が一段と赤くなってるよ?」
熱、上がったのかな?と、智はその綺麗な手のひらを俺の額に当てた。
智「うーん、そこまでじゃないような気がするけど…」
そしてさらに俺の顔を覗き込んできた。
相変わらずの綺麗な顔。
恋愛をしているせいか、肌つやもよくて、相変わらず、と言うよりはさらに輪をかけて綺麗になっていて、
俺は、まともに智の顔を見ることもできず、ただ、俯いていた。