マリア
第17章 序曲 ①
智「どうしたの?気分悪いの?」
「えっ!?あっ、いや、別に?」
智「そ。よかった。熱もそんなに高くないみたいだし。」
「あ…のさ、さっきの…」
智「さっき?」
「電話…。」
智「ああ。友達だよ?」
「そ、そう…なんだ?」
同じ学校の友達、ってことかな?
に、しても、あの二宮の反応…。
ちら、と二宮を見ると、何かを思い出したようにゲーム機をカバンにしまい肩に担いだ。
「帰んのか?」
和「ちょっと急用を思い出して…。」
二宮は慌ただしく帰っていった。
あれ?そう言えば…
智「帰っちゃったね?二宮くん。」
「よかったの?あのまま帰らせて?」
智「え?何で?」
「いや…だって…」
ここ最近、二宮べったりだった筈の智は、二宮の気配がなくなってしまったというのに、俺の隣で平然としていた。
智「そんなことより、翔くん、ヨーグルト、全部食べてよ?翔くんのために買ってきたんだから。」
はい、と、スプーンで掬い微笑んだ。
その笑顔に漂うただならぬ色気に、つい智の顔に見入ってしまう。
智にあれもこれもと勧められるまま口に入れていたせいか、俺の胃袋は嬉しい悲鳴をあげていた。