マリア
第17章 序曲 ①
「お袋、智くんは?」
「ああ、私が帰ってきたらあとはよろしくお願いします、って帰ったわよ?」
「ふーん?」
「後でお礼しないとね?」
お袋は夕飯が出来てるから、と言い残して部屋から出ていった。
次の日、俺はさっそく智に電話をした。
智『いいよ?お礼なんて?』
「お袋が早い方がいい、って言うから……明日って…どうかな?」
智『明日は……』
「あ!!ご、ごめん!そうだよな?突然。智くんの都合のいい日で…。」
智『いいよ?じゃ、待ち合わせする?』
「い、いいの?」
智『うん。』
「あとさ、あれから二宮とは連絡した?」
智『二宮くん?』
「今日、学校、休んだみたいなんだ?」
もしかしたら、俺の風邪が移っちゃったんじゃないか、って、
そう思って二宮に電話したが、何度かけても通じなかった。
智『じゃあ、僕の方からもかけてみるよ?』
また、明日、と、
智は電話を切った。
…気のせい?
電話が繋がらない二宮のことも気になるけど、
あんなに二宮に執着していたはずが、あんなにあっさり執着を捨てきれるものなのか?と、不思議でならなかった。