マリア
第18章 虚偽曲 ①
それだけなんだよ?って、智が俺に笑いかけた。
俺は何も言えなかった。
が、智の憶測に補足するならば、礼音の代わりであることを通り越して、
智のことを友だちとは違う目で見るようになってしまった自分を隠すのに必死で、
そんな俺の気持ちを意図も簡単に見抜いた二宮に誘われるまま関係を続けていた。
二宮は二宮で、雅紀とのマンネリ化したセックスに嫌気がさし、新たな相手を探していた。
だから、好きとか嫌いとかを語る以前に、俺らは単にヤる相手を探していただけで、
まさか、これが裏目に出るなんて夢にも思ってなかった。
智「だからもういいよ?帰りたければ帰ったら?」
お前などもう必要ないのだ、と満面の笑みで智は俺を突き放す。
「あの…さ…もし…もしもの話なんだけど……」
もし俺が智の誘いに乗っかって智を抱いた、として、結果、ヨリを戻すどころか……。
「仮に…だよ?松本先生とダメになったりしたら…」
じゃあ、やめとく、って、なるのか、と思いきや、
智「…それはそれで仕方ないよ。結局、僕のことは遊びだった、ってことだから。」
」
意外にも、あっさりした答えが返ってきた。
瞬間……
実は、智は俺のことが好きなんじゃないか、って考えが過った。