マリア
第18章 虚偽曲 ①
しばらくして、耳元で智が忍び笑う声が聞こえてきた。
「な…何笑ってんだよ?」
智「翔くん、て、先生そっくりだな?って。」
「どこが?」
智「二宮くんと付き合ってるクセに、僕とも付き合いたい、なんて?」
「いやっ…俺は……二宮とは……」
智「セックスしてたじゃない?」
智は眉尻を下げ、悲しそうに俺を見上げた。
智「先生といい、翔くんといい、僕をどうしたいの?」
「…それは…」
俺は違う、って、
いい大人のクセに二股かけるヤツとは違う、って……
智「……いいよ?付き合っても。」
「え……?」
智「何驚いてんの?自分から言ったんでしょ?」
「いや…だって……」
智「いいじゃない?二宮くんと付き合ってたとしても?」
「だから俺は…っ!」
智の唇が俺の唇を塞ぐ。
智「ね…早くしよ?」
吹きかけられる生暖かな息にゾクゾクする。
でもまだ俺は信じられなくて、
俺を見上げる智の頬を撫でたり髪を梳いたり唇とかを指先でなぞっていた。
智…お前は俺をどうするつもりなんだ?