マリア
第18章 虚偽曲 ①
この小悪魔。そう来たか?
したり顔で見上げる智の唇に吸い付いてやる。
智「んんっ……しょ…んっ…」
俺と智しかいない部屋に響き渡る甘い水音。
時折薄目を開けて、夢中で舌を追いかけるいじらしさに加え、
キスをしただけで、頬をほんのり上気させ、熱っぽくこちらを見る智の目の破壊力は半端なかった。
「その顔…ヤバいんだけど…」
顎を持ち上げ囁くと、智は一層顔を赤くした。
自分の中心に、一気に熱がなだれ込む錯覚に陥いる。
キスをしただけなのに、こんなにも匂いたつような色気を放つようになるなんて…。
松本が理性を失ってしまうのも無理のないことだったのかも…。
「ね…いい?」
智「……だから言ってるじゃない?今、家に誰もいないよ?って。」
理想を言うと、キスをするのも行為そのものも初めてで、
初めてことに及ぶ女の子みたいに真っ赤になって恥じらう智が見たかったけど。
智「あの…翔くん、一つだけ…。」
「何?」
智「その……あまり激しく……てか、痛くしないで欲しい……んだけど…。」
「は?」
智「それだけは…お願い。」
そっか…やっぱりまだ……あの事が…。
智「あれから松本先生とも出来なくて…。」
「あの…じゃあ…何で俺と?」
智「なんで……かな?……分かんないけど……翔くんだったらいいかな?って?……ぁ…!」
有無を言わさず、智の体を床に貼り付けた。
智「あ…あの…」
「……煽るの上手すぎ。」
智「翔くん…。」
不自然なところも多々あるけど、
垣間見せる智の素顔に俺は自分が押さえられなくなってしまった。