マリア
第19章 虚偽曲②
「力抜いて?智?」
智「うっ……ん…」
どうしてこんなにも力が入っているのか、
智がどうにかなる前に、俺の方がどうにかなりそうだった。
智「はあっ……あっ…あっ…」
段々と衰弱してゆく智を見ながら、もう、止めよう、と声をかけようとした時だった。
するり、と、急にスムーズになったような気がして智を見てみると、
智も大きく深呼吸をするように、薄い胸板を上下させた。
智「ふふっ。やっ……と、一つになれた…」
「智……。」
汗で貼り付いた前髪を指先で拭ってやると、
智はうっすらと微笑んだ。
智「僕から強請っておいて緊張しちゃった……あ…。」
俺を見、ペロリと舌を出す智を抱きしめた。
「痛いとかない?大丈夫?」
智「少し…でも、大丈夫。」
俺の体に回された智の両腕に力が込められる。
智「も……少し、このままでいて?」
「うん…。」
壊れないように、
智の細い腰をさらに引き寄せた。
智「ね……動いて?」
「ホントに平気?」
智「平気だってば。」
笑った顔があまりにも弱々しくて、
このまま上り詰めた暁には文字通り本当に「逝って」しまうんじゃないかとさえ思わせた。