マリア
第19章 虚偽曲②
部屋に戻ると、
翔くんは相変わらず布団の中に潜り込んだまま気持ち良さそうに寝息を立てていて、
起きる様子はなかった。
僕は、スマホを枕元に置き、ベッドに潜り込んだ。
しばらくして僕のスマホが鳴動し始める。
寝息を立てる翔くんを気にかけながらもチラ、と発信元を確認する。
その、発信元が、
僕の思った通りの人からだと分かった時点でスマホをそのままにし、再びベッドに潜り込んだ。
そうしてまだ、日が上らないうちにその人にコールバックした。
翔「昨日の夜、やたらと電話、鳴ってなかった?」
駅までの道のりを二人、並んで歩いた。
「え?鳴ってた?」
知っていたけど……
翔「よっぽど起こそうか、って思ったんだけど…」
「でも、多分、起きなかったかも…」
翔「何で?」
翔くんの体にピタリ、と体をくっ付けるように寄り添い、
耳元で囁いた。
「何で…って、そんなこと、翔くんが一番よく知ってるじゃない?」
翔「あ……////」
赤くなる翔くん。
翔くん…可愛いね?
可愛いけど、
今、僕が考えていることを知ったら、
君はどう思うのかな?
…僕のこと。
ここで僕のスマホが鳴り出す。
スマホを取りだし、発信元を見たあと、気まずそうに翔くんを上目で見た。
翔「誰?」
「うん……その…」
口ごもる僕を見て、翔くんは察したのか、ニコッ、と笑って行こうか、と背を向け歩き出した。