マリア
第19章 虚偽曲②
すっかり薄暗くなった部屋の中、
僕は、あどけない寝顔を晒す先生の体を膝に抱きしめていた。
僕より、一回り大人の先生。
逞しくて体格のいい先生。
そんな先生の体を腕に抱き、クセの強い黒髪を撫でながら、
先生の髪にキスを落としてゆく。
時折、苦しそうに眉根を寄せ呻き声を上げる先生を抱きしめ声をかけてあげる。
大丈夫だよ、って。
すると、安心したように微笑み、安らかな寝息をたて始める。
そうしてまた僕は、そんな彼の体を腕に抱く。
それを何度も繰り返す。
何度も繰り返しながら、
あなたは、僕のものだよ?と囁く。
なのに、あなたは……
潤「んっ……か…かず…な…り…」
「………」
いっそのこと…
いっそのこと、このまま口と鼻を塞ぎ、
永遠にその名前を口に出来ないようにしてしまおうか、
…って、その、あどけない寝顔を見るたび考えてしまう。
抱かれるたび、僕の中に永遠に閉じ込めてしまおうか、って、思ってしまう。
それが叶わないのは多分…
「もしもし?」
『あ、今、話しても大丈夫?』
「いいよ?どうしたの?相葉くん?」
雅『あのさ、カズのことなんだけど?』
…多分、『彼』のせい。