マリア
第4章 輪舞曲
潤「入ってもいい?」
「あ…はい。」
立ち上がって、先生に僕が座っていた椅子を勧める。
潤「いいよ、座ってても?すぐにお暇(いとま)するから。」
先生は、隣の空きベッドに腰かけた。
潤「絵、描いてたの?」
「えっ!?あっ…はい。」
咄嗟に、スケッチブックを隠してしまった。
潤「妹さん、よく寝てるね?」
「え?どうして兄妹だ、って知ってるんですか?」
潤「ナースたちの間じゃ有名だよ?203号室の双子の王子さまとお姫さま、ってね?」
「ふふっ。そうなんだ?」
まさか、今ごろこんなところでも言われてるなんて、と思ったら笑ってしまった。
潤「何?満更でも無さそうだね?」
「そうでもないんですけど、一時期、そう呼ばれてたことがあって…。」
潤「そうなんだ…?」
膝の上で頬杖をつくと、先生は礼音の顔を黙って見つめた。
潤「あの話…」
「はい?」
潤「伝えた?妹さんに?」
「え…?」
潤「あれ…妹さんのことだよね?」
「ああ…でも、あれは僕が勝手に聞いただけで、本人にしてみたら大きなお世話かも知れないし…」