マリア
第4章 輪舞曲
潤「それでも…」
先生は、少しだけ身を乗り出すと、眠る礼音の顔を見つめながら言った。
潤「感謝されるかもしれないよ?」
「どうかな…?余計なことして、って怒られるかも。」
あ、でも、って、思わず口に出してしまって、
松本先生にその言いかけた言葉をまんまと掬いあげられてしまった。
潤「でも?何?」
「あ…うん。その…僕たち、双子じゃないですか?」
潤「まあ…そう…だね?」
「双子なのに、どうして病気は礼音を選んだのかな、って?どうして、何の取り柄もない僕が健康なのかな?っていっつも思っちゃうんですよね?」
潤「それは君のせいじゃないだろ?」
「そうですけど…その病気のせいで幸せになれるチャンスを逃がしちゃってたら、って思ったら…」
潤「申し訳ない、って、思ってるんだ?」
「はい…。」
松本先生は、
まるで、込み上げる笑いと格闘するかのように、顔を逸らし口元を握りこぶしで塞いだ。
「…何がおかしいんですか?」
潤「ごめん。君と似た子を知ってるんでね?」
「僕に似た子?」
潤「もちろん、顔が、じゃないけど…」
気のせいだろうか。
松本先生の顔が、
とても寂しそうに見えた。