マリア
第20章 奸計曲
そんなこんなで時間だけがいたずらに過ぎていく中、押し寄せる不安に耐えられなくなって、
とうとう俺の方から大野くんに電話をかけてしまった。
こちらから電話するまで待って、と、言われていたにも関わらず。
でも、大野くんの機嫌を損ねて自分の首を絞めることになるのもイヤだったから、
かなり長い間コールしていたにも関わらず電話を切ってしまった。
…そうだよ。
大野くんに何をしようとしてるのか聞いたところで計画のすべてを話してくれるわけないじゃないか。
仮に、教えてくれたところで、
余計に泥沼から抜け出せなくなるだけじゃないか。
智「そう言えば相葉くん、目の下にクマができてる。」
覗き込んできては微笑む綺麗な面差し。
徐に、ポケットに手を入れたかと思ったら、
ビニールの小袋を取り出した。
智「よかったらこれ飲んでみて?ぐっすり眠れるよ?」
中には、白の小さな錠剤。
智「この薬、効き目が強すぎて犯罪に使われることがあるから海外じゃ出回ってないんだって。」
日本じゃ簡単に手に入るみたいだけど?と、
大野くんは俺の手を取りその袋ごと俺の手のひらに乗せた。
智「だから、一度試してみなよ?」
と、さらに、上からもう片方の手で包み込むと、
じゃ、と、片手を上げて背を向け立ち去った。