マリア
第4章 輪舞曲
潤「ごめん。ちょっと、昔のことを思い出してしまって…。」
目を閉じ天を仰ぎ見るように上向き息を吐く。
潤「邪魔してごめん。もう戻るね?」
「いえ…。」
先生は立ち上がり、歩きかけて振り返った。
潤「そうだ、一つだけ…」
「はい?」
潤「その…さっきの話だけど。もし、妹さんじゃなくて君が病気だったら、それでホントに丸く収まると思う?」
「え…?」
潤「妹さんとその恋人が幸せになるところを君は心から祝福できるの?」
「そ…それは…」
潤「妹さんはそんな君を差し置いて自分だけ幸せになりたい、って思うかな?」
「そんなこと…分かりません。」
矢継ぎ早な質問に泣きそうになってしまった僕を見て、
松本先生は困ったように笑った。
潤「だよな?…ごめん。どうかしてた。忘れて?」
「先生……?」
この間と同じように宥めるみたいに頭を二、三度ぽんぽんと叩き、撫でてくれる。
潤「妹さん、幸せになれるといいね。」
僕に当たり前のように向けられる優しい笑顔。
「あの…」
潤「そのために君も…」
でもまた、苦しそうで泣きそうに歪められる。
潤「幸せにならないとね?」