マリア
第21章 序曲 ②
「ごめん、俺、ちょっと急用思い出したから…」
「えっ!?ちょ、ちょっと、お兄ちゃん!?どこ行くのよ?」
妹の追求を無視し、
俺は疲れたようにベンチに体を預けている松本先生の元に駆け寄った。
「あ、あの…松本先生……ですよね?」
ゆっくり顔をあげ、虚ろな目のままこちらを見た。
潤「君は…?」
「俺、二宮の……和也くんの…」
潤「ああ…和也の友だちの…」
「櫻井です。」
潤「今日は友達と買い物にでも来たの?」
「え…と、妹に付き合わされて…」
潤「そう…。」
力なく微笑む。
この人、本当に窶れた。
目は落ち窪み、髭は伸び放題。
パッと見、この人だ、って分かったのが不思議なぐらいの変わりようだった。
「あの……間違ってたらすいません。もしかして、和也くんのこと探してたんですか?」
俯いた、ボサボサの黒髪がこくり、と頷いたように見えた。
やっぱり………
「あの…和也くん…て…どうして学校来なくなったか、ってのは…」
潤「それが分からないから……分からないからこうして毎日探し歩いているんじゃないか……」
先生は頭を抱え込んだまま、声を押し殺すように吐き出した。