マリア
第21章 序曲 ②
潤「すまない。君に当たったりして…。」
「あ…いえ…」
一瞬だけ、泣きそうな顔をこちらに向け、また、俯いた。
潤「あの子と一緒に行った場所を片っ端から当たってるんだが…」
でも、と口を噤ぐと、声を忍ばせ嗚咽した。
来る日も来る日も、
合鍵を手に、主がいつ帰ってくるのか分からない部屋を訪れてはため息をつき、
一緒に訪れた場所へと足を運ぶ毎日。
潤「せめて……無事にいることさえ分かったら…」
「………。」
俺は二宮が忽然と姿を消してしまった日のことを思い起こしていた。
あの日、智に電話をかけきた相手の名前を見た途端、様子がおかしかった二宮。
何かを思い出したように、カバンを持って、
…消えた。
恐らく、智に電話をかけてきた相手に会いに行ったんじゃないか、って思ってる。
でも、その相手が誰だか分からない。
そんなにも意外で、
そんなにも恐れおののく相手だったんだろうか?
そして、何よりも、
その、人物のことを、二宮は知っているらしかった。
一体、誰なんだろう……?
その、人物は……。