マリア
第21章 序曲 ②
と…いかんいかん。
智に真面目な話をするのに、
智のペースに持っていかれないようにしないと…。
「あ、あのさ、智。」
智「どうしたの?真剣な顔しちゃって?」
モフモフの手袋に夢中な智の意識をこちらに向かせる。
「ちょっと、聞きたいことがあってさ?」
智「聞きたいこと?何だろ?」
「俺の見舞いに来てくれた時に、さ、智に電話かかってきたじゃん?」
智「それがどうかした?」
「誰からだったの?」
一瞬、真顔になると智は手袋を入っていた袋に戻した。
智「どうして?」
「いや…誰だったのかな?って?」
智「だから、友達、って言わなかった?あーっ!!翔くんてば、もしかして妬いてるとか?」
「えっ!?あ…いや…そっ…その…」
智「ふふっ。嬉しい!!」
智は、急にピタリと俺に体をくっ付けてきて少しはにかんだように笑った。
智「もー、翔くんてば、そんなこと、ずっと気にしてたの?」
「あ……だ、だから…」
智「安心して?ホントにただの友達だから。」
「そ…そっか…。」
智「うん。そうだよ?」
嬉しそうに、俺の腕にしがみつき笑う智。
信じたいのに…拭いきれない不安が心の中に広がってゆく。
どんどんどんどん大きくなってゆく。
智………お願い。
お願いだから、君の言葉に嘘なんてこれっぽっちもない、って、
俺に信じさせて……。