
マリア
第21章 序曲 ②
礼音side
「ただいま…あら、智、出掛けたのかしら?」
今日は私の退院する日。
いつもは迎えに来てくれていた智も、今日ばかりは風邪気味だからと珍しく来なかった。
今日だけじゃない。
最近、ずっとそうだ。
私のこと避けてる?って、言いたくなるぐらい智は病院にほとんど顔を出さなくなった。
「もしかしたら、自分で病院にでも行ったのかしら?」
「そうだね…」
違う、と思った。
以前の智だったら、自分のことを後回しにしてでも私のことを優先してくれた。
でも今は、いつも誰かしらと電話で話してるし、よく外出してるし。
私がまだ、入院しているとき、ふと目を覚ますと、側にいたはずの智の姿が見当たらず、急に不安になって智の姿を探した。
すると、智の姿は中庭にあって終始にこやかに喋ってた。
誰と喋ってるのかな?
もしかして、翔くん?
でも、絶交した、って…
いけないことと知りつつも聞き耳を立てていると、
「にのみやくん」だとか、「あいばくん」だとか、
初めて聞く名前も聞こえてきた。
でもその時は単に、私の知らない智の友達なんだと信じて疑ってなかった。
