マリア
第21章 序曲 ②
そんなある日、
最近、滅多に顔を出さなかったはずの智が私の病室にやって来た。
智「ごめんね?なかなかお見舞いに来れなくて?」
「ううん。平気。忙しいんでしょ?」
智はごめんね?と眉尻を下げた。
それから三十分ほど喋って、「これから行くところがある。」と言って智は帰っていった。
いつもだったら時間ギリギリまでいてくれるのに、
その日もまたさっさと帰ってしまった。
そうして、智が帰った後、時間をもて余していた私はお手洗いからの帰り道、
院内で、智の姿を見かけた。
その傍らには、あの、イケてる心療内科の先生が。
でも、最近、その先生は、忙しくしているのかどうかは分からないけど、
目の下には遠目からでも分かるぐらいに深いクマがあって、さらには無精髭も。
しかも、その先生、
智とはいやに親しげで、
二人の距離もやけに近くて、まるで…
そう、まるで、恋人同士のように見つめあっていた。
そう言えば、智が突然、こんなことを聞いてきた。
「礼音は翔くんと…どんなキス…してたの?」
って。