マリア
第21章 序曲 ②
でも、智は私と血を分けたれっきとした兄妹。
心臓に爆弾を抱えて生まれてきた私と違って、智には未来がある。
やっぱり、智には幸せになってほしい。
そう、思ったからこそ私は、
そうせずにはいられなかった……
潤「どういうつもりか……って…?」
「付き合ってるんですよね?智と?」
心療内科の午前の診察が終わるのを待って、
松本先生を連れ出した。
「先生は私たちと違ってちゃんとした大人です。もちろん、智とのことを考えてくれてますよね?」
私のことを見ようともせず黙ったままの先生。
潤「それは…」
今度は俯いて黙り込んでしまった。
「まさか、結婚までの繋ぎみたいに思ってないですよね?」
潤「そんなことは……!」
でも、私の不安を打ち消すように向けられた先生の目は真剣そのもので、
潤「繋ぎなんて…そんな風に思ったことはただの一度だってない。」
逆に、この人だったら智ことを幸せにしてくれるのかも、って思ってしまった。
潤「いつも、ちゃんとしてあげたい、って気持ちで向き合ってる。」
てっきり子供扱いされ、一蹴されるのかと思っていた私は、思わず泣きそうになった。
よかった、って。
少なくとも、私の生きている時は智が泣くことなんてない、と、
この時ばかりは信じて疑ってなかった。