マリア
第21章 序曲 ②
「え…?」
翔「引く……よな?やっぱ。」
「う、ううん。びっくりした…だけ。」
え?どういうこと?
智は確か、松本先生と…。
「そっ、それで、聞きたいこと、って?」
翔「あ、そうそう。最近の智のことで、ちょっと…」
「智がどうかした?」
翔「何か…気づいたことないかな?と、思って?」
気づいたこと……。
「例えば?」
翔「例えば…そうだな。最近、よく何処かへ電話してるんだよね?」
電話……?
そう言えば…
「ね、翔くん?」
あの「あいばくん」や「にのみやくん」が何者なのか知らないかな?
「ね、翔くん。知ってたらでいいんだけど…。」
私はその二人の名前を翔くんに伝えた。
翔「礼音、今なんて…?」
「だから……『あいばくん』と『にのみやくん』、て。」
翔「智が…電話で話してた、って?」
「……うん。」
翔「聞き間違い、ってこと…ない?」
「うん……。」
翔くんは黙りこんでしまった。
「翔…くん?」
電話の向こうで、翔くんが小さく「まさか…」と呟く声が聞こえた。