マリア
第21章 序曲 ②
智「ね、これ、礼音が作ったの?」
ホットチョコレートの入ったカップを指差しながら智が笑う。
智「おかわりがほしい、って言ったらまた、作ってくれる?」
「い…いいよ?じゃ、部屋で飲もっか?」
と、何とか智と二人の時間を捻出する。
「お待たせ。」
智「ありがと…」
さっきのテンションとはうって変わって、
智は顔もあげずにスマホを弄っていた。
智「で?何?」
「え?」
智「僕と話したそうだったから。」
「や、やっぱスゴいね?何も言ってないのに私の言いたいことわかるんだね?」
智「…双子だもん。」
智はカップに何度も息を吹きかけながら、少しずつ飲んだ。
「あ、あのね…二日前、翔くんから電話があったの。」
智「ふーん、それで?」
「智のことで、何か気づいたことはないか、って?」
智「で?」
「え?」
智「礼音は何て答えたの?」
顔もあげずに聞いてきた。
しかも、無表情で。
「え…と…」
スマホを仕舞うと顔を上げこちらを向き笑った。
智「僕、変?」
立ち上がり、ゆっくりした動作で近づいてくる。
後ずさると、また、
一歩近づいてくる。
もう少しで背中が壁にくっつきそう…。
智「変じゃないと思うんだけど?」