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マリア

第22章 遁走曲



目の前の背中ががっくりと膝を着いて崩れ落ち、



俺の手からは血まみれの包丁が音を立てて床に落ちた。



黒い服でも分かるほどにその人の体にどす黒く赤い染みが広がっていって、



その人はカズの細い体を抱きしめたまま蹲った。




俺は彼の体の下で何が起こったか分からない、といった顔をしていたカズの腕を掴み、引きずり出した。



「行こ?カズ。」



彼のことを気にかけ、中々動こうとしないカズに上着を着せ、体を抱えるようにして玄関に連れていった。



でも…



和「あ……あ…あに…き…」



俺の腕を振りほどき、血まみれの男のもとへ駆け寄るカズ。



俺は大きく息を吐くとカズを連れ戻すためにもとの場所へ戻りカズの腕を掴んだ。



和「血が……スゴい血が出てる。」



俺に訴えかけるかのように言うけど、



無視してカズの体を立ち上がらせた。



和「…死んじゃう。」


「え……」


和「き…救急車。雅紀、救急車、呼んで?」



大野くんからもらったクスリのせいで、正気と狂気の間をさ迷っていたカズの口から出た言葉に驚愕する。



和「雅紀、早く…早く救急車呼ばないと死んじゃう!!」



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