マリア
第22章 遁走曲
それでも、カズを立ち上がらせ連れていこうとすると、
血まみれの男の手がカズの腕を掴んだ。
潤「か…和也、帰ろ…う…」
和「でも…でも…血が…血がたくさん出てる。」
潤「こんな傷…たいしたこと…な…い……。」
「ほら、カズ、行くよ?」
俺はそんなこと気にしてない体でカズの体を抱え込んだ。
和「イヤだ!!放せ!!」
不意に腕の中で藻掻くカズの動きが止まった。
和「ま…さか、雅紀…雅紀が兄貴のこと…?」
「そんなこと、どうでもいいじゃん?それより早く行こ?」
和「よくない!!」
カズは俺の腕を振りほどくとまた、その人の側に駆け寄り抱き起こす。
和「兄貴、しっかりして!!今、救急車…っ」
潤「一緒…に…和也…」
和「喋んないで!!い、今、救急車、呼ぶから!!」
「ほら、カズ、早く!!立って!」
和「放せってば!!そんなことより救急車呼べよ!?」
そんな押し問答を繰り返していると、誰かがドアをノックした。
「だ、誰?」
翔「ま、雅紀?俺…翔だけど?」
し、翔ちゃん?
和「さ、櫻井さん!!」
「あっ!!カ、カズ待っ…」
翔ちゃんの突然の訪問に気を取られているスキに玄関に走るカズ。
和「櫻井さん、助けて!兄貴が…兄貴が…!」