マリア
第23章 変奏曲 ②
家から少し離れたところにある小さな喫茶店に翔くんを呼び出した。
さみぃ、と言いながら、
翔くんは赤いマフラーをはずし私の向かいに座った。
「ごめんね?わざわざ。」
翔「いいけど、さ。」
久しぶりに見る翔くん。
あんなことがあって満足に眠れていないのか、
目の下にはクマが出来ていた。
「智に、しばらく会わない、って言ったらしいね?」
翔「あ…うん…」
「怒ってるわけじゃないから。」
翔「あ、そ…」
上目使いで私をちら、と私を見ると、
翔くんはコーヒーを一口飲んだ。
翔「話……って?」
「うん…実は…お願いが…」
翔「お願い?」
私から、智が不利になるようなことをしておきながら、と、いう、後ろめたさもあって、なかなか言い出せずに俯いていると、
翔くんが身を乗り出してこう言った。
翔「まさか…だけど、ヨリを戻したい、とか?」
「えっ?」
翔「あっ…!?」
きょとんとする私に、翔くんの目が泳ぐ。
翔「ご、ごめん!忘れて!独り言だから!!」
照れ隠しにコーヒーを一気飲みする翔くんは、
いつもの翔くんだった。