マリア
第24章 鎮魂曲
一階の一番奥の部屋に礼音はいた。
ただでさえ日が短くなっているところをもってきて、明かりもろくに射すこともない部屋に一人礼音はいた。
「まあ…翔くん!」
痛々しいぐらいに窶れたおばさんの隣には智。
智「翔くん?」
あれだけ仲の良かった兄妹だ。
さぞ、落ち込んでるんだろな、と、思っていたら、
母親に二言、三言何やら耳打ちすると、智は俺の側にやって来て、
智「ありがとう。礼音に会いに来てくれて。」
と、意外と普通に話しかけてくる感じにビックリしてしまった。
智「もっと近くに来なよ?」
智の綺麗な指先が俺の手を無遠慮に掴む。
顔と体を白い布で覆われた礼音の側まで連れてゆく。
智「礼音、翔くんだよ?」
顔、見る?と、
礼音の顔にかけられた布に手を伸ばした。
「いや…いいよ?そのままで。」
智「そう?」
何だか、礼音に見ないでよ、って、
言われたような気がしたから…
『智を見捨てないで。』
『智の側にいてあげて。』
そして、言いかけてやめた、最後の言葉…
『それでも…手に負えなくなった時は私が…』
まるで、母親が息子の不始末の責任を取ります、みたいな…
まさか、な……。