マリア
第4章 輪舞曲
和也side
俺は、心療内科の窓口での受付を済ませると、自分の順番を待った。
しばらくして、二番の診察室の電光掲示板に俺の番号が点灯して、
担当ナースが仕切りカーテンから顔を覗かせ、待合室の椅子から立ち上がった俺と目が合うと、どうぞ、と声をかけた。
俺の担当は松本潤。
俺の腹違いの兄貴で、一回り以上の年齢差がある。
潤「最近調子はどう?」
「いつも以上にやる気が湧かない。毎日つまんない。」
潤「それは困ったね。じゃ、食事は?」
「普通に食ってる。」
潤「眠れてる?」
「全然…」
ヤツは俺が答えたまんま、パソコンに打ち込んでゆく。
潤「そっか…じゃあ、この間止めてた薬、出しておこうか?」
「うん。」
潤「もし、調子良さそうだったら調整して飲んで?」
「…分かった。」
潤「和也…くん。」
「はい?」
潤「今日は…元気そうだね?安心した。」
「『今日は』?」
潤「あ、ああ、ごめん。前回来た時は少し顔色が悪かったからつい…」
「ふーん。」
俺と全然似ていない、綺麗な顔立ち。
伏し目になると睫毛が長いのがよく分かって、
こいつ、モテんだろうな、って気がした。
血が繋がってても、こうも違うもんか、ってイヤでも考えてしまう。