マリア
第24章 鎮魂曲
智「いい加減、もう行かなきゃ。」
俺に背中を向け、服を着込んでゆく智。
俺より体が小さくて、体力も無さそうなのに行動に移すのが早い。
智「服着た?」
準備万端、という感じで智が振り返る。
早ぇ…(汗)
俺はといえば、ズボンのファスナーが引っ掛かって、
キチンとソイツを上げきれないままちゃちゃっと上着を着てしまった。
智「翔くん…」
さっきの甘い余韻を残した声色で智が俺の名を呼ぶ。
智「今日は来てくれてありがと。」
「うん。元気出せよ?」
うっすら笑いながら俺に歩みよると、
少し背伸びをしてキスしてきた。
智「また……会える…よね?」
「うん。明日…お通夜だろ?絶対来るから。」
智「そうじゃなくて…」
急に言葉尻が小さくなって、
俯き俺の袖口をつんつんと引っ張った。
智「だから…つまり…その…これからも…」
「え……あ…」
…そ、そういうお付き合いを復活させようか…ってこと…?
いや、それは言い出しっぺの俺としてはちょっと…
智「どうしたの?」
邪な俺の顔が覗きそうになった時、
さっきから気になって仕方がなかった智の腕の傷が目に入った。