マリア
第24章 鎮魂曲
次の日。
お袋も一緒にいく、と言うので、まずは家族に挨拶をしておこうと二人で智の家に向かった。
「まあ……!わざわざありがとうございます。」
お袋の姿を見るなり智の母親は、智の手を借りながらもお袋の側へと歩みより、二言、三言と言葉を交わした。
「あの子の顔、見ていってください。」
礼音の顔に掛けられた布が捲られた途端、お袋は目を見開きハンカチで口元を覆った。
俺と智はと言えば、
その日は、特に言葉を交わすことなく通夜を終え、
通夜振る舞いもそこそこに、お袋と一緒に帰宅した。
その帰りの車の中、
お袋が妙なことを言い出した。
「ねぇ、翔、あなた、礼音ちゃんのご遺体、ちゃんと見た?」
「え…?見てない…てか、そもそもそんなにじろじろ見るもんじゃないだろ?」
「そうだけど…」
「どうかしたのかよ?」
「あのご遺体…何だか…。」
「何だか…?」
「…私の見間違いならいいんだけど…。」
理由を聞こうとしたけど、
お袋は前を見据えたまま、それきり口を開くことなく、
家に着くまでひたすら無言でハンドルを握りしめていた。