マリア
第25章 後奏曲
礼音と付き合い始めたばかりの俺はまだ今より全然子供で、
今後、礼音とのことをどうしていこうなんて考えていなかった。
こうして、礼音との時間を重ねていくたび、
会って話すだけじゃなくて、礼音に触れたい、キスしたい、なんて思うようになっていった。
智「翔くんてば、どうしたの?」
「え?」
智「礼音の顔に何かついてる?」
無意識で触れていた礼音の唇。
「あ…いや…別に?」
慌てて手を引っ込める。
智「礼音、恥ずかしがってるよ?」
「そっ…そうだな?」
そうは見えない。
辛うじて、礼音の顔のそばに置いた淡い色の花がそう見せているだけ。
智「もう、時間だって?」
「そっか…」
礼音、ごめんな?振り回したりなんかして?
俺からコクっといて、
病気持ちはヤダ、なんて…。
智と付き合い始めた、って聞いて、ホントはイヤだったはずなのに…。
勝手だよな?俺。
『智の側にいてあげて…』
礼音…ごめん。俺…
なかなか動けないでいる俺を遠ざけるように智に手を引かれて棺から離れた。
そのどさくさに、絡められる智の綺麗な指先に違和感を感じて智を見ると、
能面にそのまま貼りつけたような笑顔で俺を見ていた。